ゴォーン…ゴォーン…。午前6時。まだ静かな市川大門地区の街に、鐘の音が響き渡ります。街を見渡せる高台にある真言宗金剛山宝寿院。毎日午前6時から午後6時まで3時間ごとに5回、時を知らせる鐘を鳴らしています。市川大門の一瀬茂さん(60歳)は、その鐘を10年以上、毎朝6時に突いています。「これで、今日も一日が始まります」 一瀬さんにとって、宝寿院は母方の実家の菩提寺で、朝の散歩コース。広瀬義仙住職の母・春江さん(今年2月に他界)と毎朝世間話をするのが楽しみでした。10年ほど前のある日、春江さんに「鐘を突いてみんけ?」と声をかけられたのが始まりでした。以来、長期出張などの場合を除いて、雨の日も雪の日も休まず通っています。 朝5時45分、家を出て宝寿院に向かいます。本堂に参ったあと鐘楼に上り、持参したラジオの時報に合わせて綱を引きます。ゴォーン。10呼吸おいてから次のひと突き。突いては小石を1つずつ並べ、6つそろうまで無心に突きます。その後は、町内を約1時間かけて歩くのが日課です。 鐘を突くようになって「自分を見つめ直す時間ができました。ご加護もいただいている気がします」。一瀬さんはOA機器販売会社「邦文堂」の社長。町内の歴史的な建物や文化財の保護活動にも長年取り組んでいます。「鐘突きから、継続の大切さもあらためて学びました。縁あっていただいた貴重な役目。長く続けていきたいです」と話していました。
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