「10年ぶりくらいに屋外に出しました。バイクも喜んでいますかね」―。市川大門の笠井登さん(51歳)がまたがっているのは、1962年発売のホンダ「ポートカブC240」です。 まるで“3丁目の夕日”の世界から飛び出してきたようなレトロな姿のバイクは、20年ほど前に知人から譲り受けました。以来、経営する洋服店「メンズカサイ」の店内に飾ってきたため、車体はさびや日焼けもなく往年の姿をとどめています。 「お客さんには『古いね』と珍しがられます。でも、ガソリンとオイルを入れれば、まだ走らせることができます」 ポートカブはスーパーカブを大衆向けに開発され、装備もシンプルです。「ウインカーもついていないから手信号ですよ」と笠井さん。ハンドルも自転車のハンドルのような形で、愛きょうたっぷりです。 同店は笠井さんで2代目。店内には珍しいテーブルも置かれています。 「先代が使った足踏みミシンを使わなくなったので、テーブルにリサイクルしました」 笠井さんの言葉からは古いものへの愛情が伝わってきます。 「古いバイクやミシンには先人の技術や開発の努力が感じられます。それがあって今の時代がある。そう思うからこそ、古いものを大切に残したいと思うんです」
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