「新しき刻(とき)が流れているならむ床の間の水仙わずかにひらく」(1996年山日新春文芸三席)―。富竹新田の小田切福太郎さん(89歳)は4月、歌集「ちびた下駄の足跡」を自費出版しました。 A5判、全238ページ。短歌約1,000首と、山梨日日新聞「ひとこと」欄への投稿記事10編を収録しました。戦争一色だった青春時代や、夫婦の何げない日常を詠んだ歌、孫への愛情にあふれた歌などが年代順に並んでいます。小田切さんは「どれも思い出深い作品。タイトルの通り、長い人生を記録するつもりでまとめました」と振り返りました。 小田切さんは2015年、一人娘を突然の病で亡くしました。40代という若さと、残された孫2人を思い、悲しみに暮れる日々でしたが、歌集を作ることは生前から話に出ていたため、ようやく“約束”を果たした形となりました。妻・敏子さん(75歳)は「夫は、完成した歌集を真っ先に仏前に捧げ、涙を流していました」と話し、目頭を押さえました。
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