2004年11月11日
安らぎの社会は 点検・山梨の地震対策
<4>医療体制、実践へ不安
救護班派遣先は未定 市町村の事前指定なし
「小千谷市周辺にある診療所の多くは被災して機能停止となり、拠点病院に患者が集中していた。患者を受け入れ切れない病院もあった」。新潟県中越地震発生後、現地入りした日本赤十字社山梨県支部の田村宏係長の報告からは、医療現場の混乱ぶりもうかがえた。
山梨県は、阪神大震災を契機に救急を含めた医療体制の強化を図った。国の指針に基づき、災害拠点病院として県立中央病院をはじめ、保健所単位の二次医療圏ごとに一カ所、計九病院を指定した。さらに拠点病院の被災などに備え、県独自の考えで計三十二病院を支援病院とした。
命を守る施設だけに各病院では免震や耐震工事が進んでいる。県が今年一月実施した全六十三病院対象の調査によると、施設構造の強化を図ったのは、入院棟や診療棟に限定した一部実施を含めて四十五病院(71・4%)。また自家発電装置は五十九病院(93・7%)が備える。備蓄状況の平均値をみても医薬品は四・六日分、非常用食料二・七日分など「ライフラインが途絶しても七十二時間は対応できるという国の基準はほぼクリアしている」(県医務課)という。
被災地の医療体制をめぐっては、避難所に併設する救護所の役割も重要視されている。今回の新潟の地震でも発災直後から、けがをした人が次々に救護所に駆け込んだ。約三千人が避難した小千谷総合体育館で二日間、活動した日赤県支部の救護班は計五百四十一人を処置。「夜間も出入りは多く、ほぼ二十四時間診療だった」(同支部の田村係長)という。
県は五−六人でつくる救護班を百五十四チーム編成。救護所に派遣する計画だが、派遣先は決まっていない。救護所を設ける市町村の大半が設置場所などの事前指定をしていないからだ。
五十カ所の屋内避難所を指定している甲府市は「全避難所への(救護所)開設を想定しているが、発災時の被害状況をみて判断する」(防災対策課)と、事前指定はない。噴火被害も取りざたされている富士山のふもと富士吉田市も具体化していず、防災対策課は「中学校単位での事前指定に向け、医師会などと調整している」状況だ。
これに対し、静岡県では救護所として全市町村に最低一カ所は確保できるよう五百二十三カ所を事前に指定している。そこで活動する医師の割り振りも既にできており、医療分野に限定した図上訓練なども定期的に実施。図上訓練について同県医療室の担当者は「発災時は現場が相当混乱することが予想されるため、訓練を通じて問題点を洗い出している」と説明する。
山梨県では全庁的な防災訓練や図上訓練は行っているものの、医療分野だけの訓練は経験がない。県医務課の山本正文課長は「マニュアル策定などの事前準備を生かし、速やかな対応を取っていくためには(医療分野だけの)独自訓練が必要」と、運用面に課題があることを認識。今後、実施に向けた検討を進めていくという。
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