2004年11月9日
安らぎの社会は 点検・山梨の地震対策
<3>情報伝達、途絶の恐れ
防災無線、機能に地域差 進む老朽化、対応急務
十月二十八日、地震発生から五日が過ぎた新潟県十日町市。「市内に防災行政無線はありません。市民にはチラシで情報を伝えています」−。応援に駆け付けた山梨県災害派遣班班長の笹本勝相主幹は、現地の連絡態勢を市職員に聞いてあ然とした。到着後の最初の仕事は、被災状況や生活情報を記した用紙を整理し、避難所に配布することだった。
建物倒壊、停電、電話回線はパンク。被災地は最も重要な情報伝達手段を一瞬にして奪われた。防災無線が未整備の自治体もあった。整備されていても非常電源がなかったり、余震が続いて機器が設置してある庁舎に入れず結果的に使えない事例が目立った。
山梨県内では東海地震対策として、全国に先駆けて防災無線の整備が進められた。県は市町村との連絡手段として人工衛星を活用した衛星系と地上無線を利用した地上系の二つの通信方法を確保。携帯・車載無線機や衛星携帯電話なども整え「関係機関との連絡には二重、三重の体制を備えている」(消防防災課)という。
また市町村から住民への連絡手段として、屋外に設置したスピーカーなどで各地域に同時放送する固定防災無線(同報無線)があり、県内整備率は96・8%と全国で五番目に高い。
ただ県内でも、ほとんどの市町村が庁舎内に受発信用の防災無線機器を設置している。非常電源については「停電時に自動的に切り替わり約一週間分の電力を賄うことができる」(西八代郡市川大門町)という所がある一方、拠点となる役場庁舎に自家発電施設を備えていない自治体もあるなど地域差があり、新潟と同様のトラブルが発生する恐れがある。
さらに山梨県内の市町村の機器は一九七○年代後半から八○年代前半に設置されたものが多く老朽化も懸念され、「スピーカーなど屋外施設の耐震性も含め、被災時に情報受発信エリアが守られ、きちんと機能を果たせるのかどうか、再点検が急務」との声は県内でも強くなっている。
施設の見直しを進め、今年度中に屋外施設(スピーカー)の設置数を十七から二十七に増やす東八代郡豊富村や、ケーブルテレビ網を使い各家庭に防災無線と同様の情報を流す北杜市高根町の例など、県内でも必要性を認識し、整備に力を入れる動きがみられる。
だが「避難所に身を寄せ合う被災者をニュースで何度も見た。いざという時は普段から住民の窓口となっている行政が頼り。しかし周囲の状況が知ることができなければ何をどうしていいか分からない。情報が閉ざされることが一番怖い」(笛吹市石和町の三十歳代会社員男性)のように、不安を感じた県民は多い。
東京経済大の吉井博明教授(災害情報論)は「情報伝達は災害時の最も重要な要素。山梨には孤立化の可能性が高い地域もあり、多くの手段を確保する必要がある。他地域から情報収集専門の人員を派遣するなど機動性のある対応も考えなくてはならない」と指摘。いかに情報を把握し、また行き渡らせることができるか。「減災」への鍵を握る事前の体制整備があらためて問われている。
|