2004年11月5日

防災 市民の手から 山梨・活動リポート
<3>動き出した弱者たち
自分の情報、地域に開示


災害時の自己マニュアルについて意思を伝える北島英子さん(写真右)=笛吹市八代町の北島さん宅
ケアマネジャーや訪問看護スタッフらが集まり災害時の対応について話し合った検討会=笛吹市八代町の北島さん宅
 「命をとるか、プライバシーをとるか。昨年末から、機会があるごとに訴えているんですが−。なかなか理解を得られなくて」。山梨市身体障害者福祉会の丸山義郎会長は、ため息交じりにこう漏らす。
 地域には、高齢者や障害者など「災害弱者」と呼ばれる人たちも住んでいる。どこにどんな人が住んでいるか−。いざというときに助け出すには必要な情報だが、その情報を積極的に出すことができない人たちも多い。自治体や防災ボランティアなどが防災マップを作る過程で、この「プライバシー」の問題がたびたび出てくるのも事実だ。

「マップ」に掲載
 「地域の人たちに知ってもらうことが障害者の助かる道。『プライバシー』という問題が発生し、自治体からのアプローチが難しいのであれば、障害者自らが、名乗りを上げなければならない」。同会では、地域の障害者宅を一軒一軒回り、防災マップへの掲載をお願いすることにしている。
 遠くの親せきが助けに来てくれるのを待つのでは遅すぎる。家族と同居であれば助けてもらえるかもしれないが、一人暮らしや二人きりの家庭では、隣近所と普段から交流を深めていなければ、助けてもらえないかもしれない。丸山会長は「助かりたいのであれば、当事者が考えなければならない。マップ作りは簡単にはいかないかもしれない。機会があるごとに啓発し、草の根的に広げていきたい」と思いを強くする。
 難病患者も「災害弱者」と呼ばれ、災害時には緊急の対応が必要となる。筋委縮性側索硬化症(ALS)の在宅療養生活を送っている笛吹市八代町の北島英子さんは、人工呼吸器を装着し、日中は車いすでの生活を送っている。わずかに動く指先で操作するパソコンと、介助者が示す文字盤で意思の伝達を行う日々だ。

マニュアル作成
 「停電時、人工呼吸器は? 避難の方法は?」。北島さんは、災害時の自己マニュアルを作成しようと準備を進めている。同じ病名でも、症状はさまざま。北島さんは自己マニュアル作りを通して、北島さんを取り巻く人たちと情報や思いを共有したいと考えている。
 九月初め、日ごろ北島さんのケアを担当しているケアマネジャーや訪問看護・介護ステーションスタッフ、ヘルパー、保健所職員らが集まり、災害時自己マニュアル検討会を開いた。「震災直後に駆け付けられるかは分からない。身近な人たちに支援をお願いしなくては」「地域の人たちにアンビューバッグ(手動式人工呼吸器)の使い方を覚えてもらいたい」−。検討会で課題となったのは、行政や社会福祉協議会のサポートが受けられるまでの支援体制づくりだ。
 「アンビューバッグの使い方の講習会が必要なのでは」「講習会の講師として協力できると思う」−。災害時に助けを必要とする人が同じ地域に住んでいるということを、講習会などを通して地域の人たちに伝えること。マニュアル作りと並行して、行わなければならない。
 自己マニュアルは、当事者だけでは作れない。家族、介護・看護スタッフ、地域などの協力こそが必要となる。「本人だけのマニュアルで終わらせたくない。地域に住む障害者や高齢者の参考になるようなマニュアルを作りたい。そのために、まずは地域の人たちに知ってもらうことだと思う」。夫の恒男さんはこう話す。
 災害弱者が災害から守られる社会は、だれもが守ってもらえる社会。防災への関心が高まる中で、災害弱者も小さな歩みを始めている。

地震発生時、家にいたら その2(一般的な対処法)
〇地震の影響で建物が傾き、出入り口が開かなくなって外へ避難できなくなる可能性があるため、ドアや窓を開けて出口を確保する。
〇屋根瓦や窓ガラスなどの飛来物、ブロック塀の倒壊の危険があるので慌てて外に飛び出さない。家屋の倒壊や火災などの危険がある場合は、飛来物に注意して慌てず落ち着いて避難する。
(災害・防災ボランティア未来会「大地震に備えてのマメ知識」より)



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